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はるかビーかな

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10 年前

遊戲

突然出会った妹と ――キスをした。
「もしかしてこれ……きす?」
その少女は、そう言いながら “未来リスト” と名付けられた手帳に ○ をつけた。
そこには “キス” “家族に会う” “ネギトロお腹いっぱい” と書かれていた。
「いまの……きすじゃない?」
誤解なく言えば、あれはキスではなく人工呼吸。
展望台で倒れていた彼女を助けるためのとっさの行動―― の、はずだったのに。
「お兄ちゃん、お帰り――って、どしたの? 疲れてるように見えるけど……」
俺と妹の 結衣 は、小さな頃から二人で過ごしていた。
里親であるシスターの 朝陽さんは、結衣のために今日は赤飯を用意していた。
恥ずかしがる結衣を尻目に、俺は結衣の成長を感じることができて、少し嬉しかった。
あの少女が気掛かりで展望台に戻ったら、そこには違う女の子がいた。
一生懸命に、一人で凧揚げをしながら。
全然飛ばないその凧揚げを手伝うと、女の子は無邪気に喜んだ。
「あたしは 心音 っていいます。 今日からあなたのことを、敬意を込めて……先輩って呼んでいいですか?」
「あっ、かなたちゃん…… ありがとっ!」
街中で偶然会った幼なじみの 雫 の荷物を受け取って、少しだけ足を速めた。
今日も喫茶 『シトランテ』 からもらった食材と、内職で仕上げた荷物を両手にいっぱい。
小走りで肩を並べた雫の位置は、前でも後ろでもなくて、いつもどおり隣に半歩…… それが俺たちの距離だった。
「……また会った」
家に戻ると、そこには朝に展望台で出会った少女が立っていた。
少女の名前は はるか。
はるかは、俺・かなた と同じ目、同じ髪、同じ雰囲気、そして俺が父親からもらった形見と同じ “青い羽” を持つ少女。
それもそのはず…… はるか と かなた は、双子の兄妹なんだから。
それが、はるかとかなたの……ちょっぴり不思議で、ちょっぴり切ない、恋物語のはじまりだった。

わたしのために泣いてくれて ―――ありがとう。

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